1991.6 Xを追う1 -TOSHI-

ぐんまけんはさむい。

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1991.6月号 PATi PATi ROCK'N'ROLL Vol.48
「緊急特集 Xを追う-1」
TOSHIインタビュー 91.4.12取材 L.A(森内淳)


---11月に渡米した直後にヨシキさんのアクシデントがあったんですが.やっぱり,こりゃ駄目かなあって感じでした?

TOSHI:
駄目だとは思わなかったですけど,かなりショックでしたよ.さあいこうってこっちに来て,ほんと気合入ってた時だったから.こう襟を正してね,さあいくぞっていう時のアクシデントだったから.で,かなり経過がやばかったですからね.前,渋公をキャンセルした時よりもね.だから,ちょっとだけナーバスになりましたよね.まあやっぱりでも,時の経つのを待つしかないですからね.

---そういうふうに割り切れましたか.

TOSHI:
今だからそういえるけどね,かなり混乱しましたよ,あの時はほんとに.ただ,ここで冷静でいなきゃいけないなって,思いました.みんな浮き足立っちゃいましたから.ここでメンバーが固まらなきゃならないからって.俺たちはしっかりしようって.まあ自分一人だったらほんと動揺したでしょうけど.

---で,ヴォイス・トレーニングに通う毎日だったわけですね.

TOSHI:
そうですね.こうなりゃこっち本場だからヴォイス・トレーニング,毎日通って.ところが,今度は僕の喉にアクシデントが出ちゃって.

---というと?

TOSHI:
ここがまた問題なんですけど,そろそろヨシキが始動できるかもしれないっていう時に僕の喉を手術する,しないという話になっちゃいまして.

---え!?なんなんですか,それ.

TOSHI:
これはね,日本にいた時から喉の病気を持ってたんですけど.ポリープじゃないですけども,血の固まりみたいのができてて.で,こっちの専門医の医師に見てもらったら,これはやばいということになりまして.これは手術するか,ヴォイス・トレーニングでケアしていくかだけど,手術で取る以外は治んないよっていわれまして.

---…….

TOSHI:
で,かなり落ち込みまして.こりゃやばいな,と.どうしようかな,と.

---声が出なくなっちゃうんですか.

TOSHI:
声は出るんですけど,音程が下がったりするんです.ポンといきたいところでいけなかったりするんですよ.声が枯れたりかすれたりつぶれちゃったりするんです.うたう分には支障はないんですけど,ただ,血の固まりがない時代から考えると,今は(うたう力は)下がってるんですよ.だけど,それをヴォイス・トレーニングで上げてるんです.

---それ,ヨシキさんの体と同じじゃないですか,トシさん.

TOSHI:
そうなんです(笑).本当はそうなんですけど,俺のは見えませんから.

---そういう問題じゃないっしょ.

TOSHI:
まあもう2年前からあるもんですから.

---しかし,ヴォイス・トレーニングでケアできるもんなんですか.

TOSHI:
完璧にはケアできないでしょうね.でも,無理しない限り,悪くはなりませんからね,今の唱方では.現状維持はできるんです.だから,いろいろ考えましたよ.ほんとはこれ手術してとっちゃえば,昔みたいに戻れるのかなあとかね.昔はあと4音とか上が出たんです.ただ,どうなるかわからないし,メスを入れるのもあって.で,今のステージでやっているような無理したうたい方を続けてたら,別に手術で取ってもすぐにまたできるっていうことだったんですよ.だから,これはもう基本的なうたい方を直さない限り,治んない,と.で,いろんなことを一時考えましてね.ここでまた俺が手術をするといい出すと,一か月くらいは完璧にうたえない状態になるんで.そうもいってられないしなあって.で,いろんな医者とヴォイス・トレーナーと相談したりして,ここはじゃヴォイス・トレーナーが手術をしないで,ある程度のレベルまで持っていくから,一緒にがんばろうという状況になりまして.それから毎日のようにヴォイス・トレーニングに通ってるわけなんです.

---成果はあらわれてますか.

TOSHI:
まだまだ完璧にマスターしたわけではないですけど,なかなか俺もやるな,と(笑),今まで録音した楽曲は納得いってます.

---しかし,ヨシキさんといいトシさんといい,なんだか壮絶なレコーディング風景が展開されてますなあ.

TOSHI:
ただ,ヨシキみたいに叩けなくなるわけじゃないですからね.うたえますから.ただ,ほんとに気をつけてやらないといけないですからね.ちゃんと休みをとらなきゃいけないし.あと喋っちゃいけないっていわれまして.でも,僕,お喋りだから(笑),わりと喋るの好きだから,これは困りましたよ(笑).そんなにお酒もガーガーやってないし,煙草も勿論,吸ってないし,カラオケなんかもってのほかだし.喉に不健康なことはやってないですね.

---レコーディングとはいえねえ……普通,こんな状態じゃレコーディングしませんよね.

TOSHI:
そうなんですよ.ほんとだったら休みたいし,声出さないでいたい,みたいなとこってあるんですよ.だから,もう神経過敏になってますね,結構.その状態がずーっと続いてるから,今に爆発するんじゃないかと思うんですけどね(笑).

---なんだかもう窮地の状況で物事が動いてるというか…….

TOSHI:
いやー,ほんとそうですよ.また,その極限って言葉が好きですから,俺たちは.

---そ,そんな…….

TOSHI:
まあ,なんか気合でそういうの乗り越えてやるのが当然だ,みたいな風潮がありますからね(笑).だから,甘いこといってられないんですよ.

---はあ.まあ"アート・オブ・ライフ"という30分間もある大作も控えてますしねえ.

TOSHI:
まあうたいっぱなしではないですけど.でも,他人の曲の3曲分くらいで済むんですけど.

---充分,長いですよ(笑).

TOSHI:
あの曲は何が凄いかというと,長いっていうのもそうなんですけど,詩がね,ヨシキ自身の人生を語っているような詩を語ってるんですけど.で,僕自身の人生を語っているような"ヴォイスレス・スクリーミング"っていう曲があるんですけど,これも凄い時間がかかったんだけど,これは自分のことだからわかってるわけじゃないですか.ここをこう表現したらこうなるんだ.ここをこううたったらこうなるんだって.ところが,今度は他人ですから.他人の人生を語るわけですから,一筋縄ではいかないなっていうのがありますから.これはきついでしょうね.トーンも高いし(笑).でも,この曲には,その極限の声が必要なんですよ,ヨシキにいわせたら.

---完全に自殺行為ですな.

TOSHI:
楽にうたっちゃいけないんですって(笑).極限の声が出るか出ないか,かすれるかかすれないか.その極限の声でないと表現できない感情なんですね,これが.喋っててもおかしくなっちゃいますけど,ほんとそうなんですよ.

---いやー,もうおかしいのを通り越してますよ.痛々しいですよ.メスを入れるか入れないかっていう喉でうたうわけでしょ.

TOSHI:
(笑).

---頼むからやめてくれっていいたくなりますよ.

TOSHI:
いやいや(笑).そうらしいんですよ.でも,自分でもそう思いますよ,やっぱり.きっとね,それは誰にもできないことだと思うし,このメンバーあってのね,理解の仕方だと思うから.自分はそれを選んだ人だし,選ばれた人だから,それを成し遂げたいなあ,と.ちょっとぐらい喉が傷ついても.それは一曲を作る為ならね,やっぱりやりたいなあってありますよね.かなりの葛藤はやっぱりありますけど.

---葛藤がありますか.

TOSHI:
うたいたいんだけど,俺の能力じゃうたえないとか,うたいたいんだけど喉がついてかないとか,自分の中じゃいろんなそういった葛藤があるんですけど,その日OKが出ても,心にこないようだったら,やっぱりうたい直しますからね.そしたら,やっぱりこれから(セカンド・アルバムの為に)どんどんうたわなければならないんですけど,もしかしたら,レコーディング延びちゃうかもしれないですけど,これはしょうがないですよね.楽器じゃないんですからね.

---いやー,でも凄まじいアルバムになりそうですね.

TOSHI:
まあほんとに期待に胸を膨らませていいよって感じですね.

---そうですか.じゃ最後にお約束のファンへのメッセージというやつを.

TOSHI:
そうですね,ライブも決まってるし,本当にみんなの気持ちがバネになってます.本当は辛いっていったらいけないんだろうけど,辛いこともありました.今でも,なかなか一筋縄ではいかない部分もありますけど,凄くね,本当にみんなのことを思い出すことってあるんですよ.例えば,歌をうたってる時も,みんなの顔を思い出すんですよ.そうするとやんなきゃって思うんですよ.あと変な話だけど,体を鍛えている時もね,その時もね,みんなのワーッていう歓声を思うと腹筋も痛くないです(笑).

---(笑).

TOSHI:
お前たちの愛が,このレコードを,そしてXを作るにあたって,ジグソー・パズルの一枚になってるな,と.メンバーだけの力じゃない,スタッフやみんなの力で一枚のアルバムが,ひとつの大きなコンサートが,きっとブッ放すようなものになるんじゃないかな,と思ってます.みんなには感謝してます.